Jensen【25 Klavier-Etuden, Op. 32】イェンゼン 25の練習曲 作品32

【簡介】
 ポスト・シューマンと絶賛され、「音の詩人」とも呼ばれた作曲家〈イェンゼン〉による、華麗な練習曲。アドルフ・イェンゼン(1837-1879)はドイツで活躍した作曲家、ピアニスト、指揮者である。音楽史上ドイツ・リートの作曲家を挙げるとしたらシューベルト、メンデルスゾーン、シューマン、ブラームスが思い浮かぶが、イェンゼンはこの作曲家たちによってドイツ・リート派の音楽が円熟した後期に、シューマンの後継者として位置付けされる人物である。 この『25の練習曲』作品32は1860年代、イェンゼンがケーニヒスベルクの音楽院の副学長を務めていた時の作品である。イェンゼンはこの曲集に「作品への予備練習曲」というサブタイトルを付け、指を速く動かすための練習や超絶技巧的なテクニックを身に付けるためだけのものではなく、ショパンやヒラーの練習曲のように音楽的に表現するテクニックを培うための練習曲として作曲した。この曲集は、当時ドイツにあった色々な音楽学校で練習曲のレパートリーとしてとり上げられ、教育上たいへん為になるものとして知られていた。 『音の詩人』として当時名を馳せたイェンゼンによる美しい練習曲集。
アドルフ・イェンゼン（Adolf Jensen、1837年1月12日ケーニヒスベルク-1879年1月23日バーデン・バーデン）は、ドイツの作曲家、ピアニスト、指揮者である。リストからも賞賛されるほどのピアノの腕の持ち主。色彩が豊かな作風で、時には印象派ともいえる和声が特徴。音楽史上ドイツ・リートの作曲家を挙げるとしたら、F. シューベルト、F. メンデルスゾーン、R. シューマン、J. ブラームスが思い浮かぶが、イェンゼンは先に挙げた作曲家たちによりドイツ・リート派の音楽が円熟した後期に、シューマンの後継者として位置付けされた人物である。はじめはシューマンを手本としていたが、師匠であるL. エラールトをはじめ、F. ショパン、F. メンデルスゾーン等の音楽からも影響を受けている。またR. ヴァーグナーの音楽に深く感動し、「ヴァーグナーの美と真実の理念を、より小規模な形式にする事」が自分の大望だと明言し、彼の作品を研究しながら自分の音楽にも取り入れた。イェンゼンは後期ロマン派の作曲家の中でも特に繊細な感受性の持ち主だったと言われ、詩が持つ雰囲気を音楽だけで表現する才能を持っていた。そのためかイェンゼンが多く残したのは歌曲であり、42歳の生涯の中でドイツ・リートを約150曲、ピアノ曲を約100曲、その他に交響曲、合唱曲、オペラを作曲した。肺病のため42歳で亡くなった。
 『25の練習曲 作品32』は、1860年代、イェンゼンがケーニヒスベルクにいる時に作曲された。その頃のイェンゼンは経済的に自己確立ができ、繊細で優美な芸術性を求めたり、熱烈に尊敬していたR. ヴァーグナーのダイナミックさを和声に取り入れる等、自分の音楽の幅を広めようとする勢いのある時期だった。当時のイェンゼンはケーニヒスベルクの音楽アカデミーの副学長であり、ピアノの教師だった事から、練習曲を作るという動機が理解できる。この曲集はJ. モシュレス教授に献呈され、賛辞を受けた。イェンゼンはこの曲集に“作品への予備練習曲集”という言葉をサブタイトルとして付け、指を速く動かすための練習や超絶技巧的なテクニックを身に付けるためだけのものではなく、F. ショパンやS. ヒラーの練習曲のように音楽的に表現するテクニックを培うための練習曲として作曲した。この曲集は、当時ドイツにあった色々な音楽学校で練習曲のレパートリーとして取りあげられ、教育上大変ためになるものとして知られていた。この楽譜の初版はドイツのペータース版から3分冊にされて出版されたが（第1巻：1番〜8番、第2巻：9番〜18番、第3巻：19番〜25番）、当曲集は25曲を1冊にまとめたものである。